委員長挨拶


「今年のジャパントリップはいつやるんだ?」
9月に入学したばかりの学生が、とある日本人学生に問いかけた言葉です。

まだ企画さえもされていなかったトリップを、新入生の彼が知り、興味を持ってくれた訳。
それは学内の教授が過去のジャパントリップに感心し、心から推薦して下さったからでした。

2006年に始まったジャパントリップも、今回で無事4回目を迎えることができました。

過去3回のトリップで蒔かれた種は、着実に色々なところで芽を出しつつあるようです。

授業中に日本のことが話題に上ることも非常に多く、かつての日本人学生が感じたであろうマイノリティ意識を実感させられることも少なくなりました。
また、今年度の実行委員の中には、2007年のジャパントリップ時に東京で開催されたシンポジウムに触発されて留学して来た、というメンバーもいます。

過去の小さな波紋が、徐々に広がりながら、好影響を与えていく、そんな様子が目に浮かびます。
これから10年後・20年後、今までのトリップに参加した学生がパブリック・ヘルス界のリーダーになるとき、一体どんな化学反応が起こっていくのでしょう か。非常に楽しみです。

そんな過去の肩に乗っかりながら、今年度蒔く種は、健康な社会とハッピーな老後に向けた種です。

日本が世界一の健康寿命を達成するに至った背景は、食生活や遺伝といったことだけでは説明しきれません。経済成長も大いに寄与したことでしょうし、衛生的 な生活、保健医療システム、高度な教育、比較的均質な社会構造、宗教や価値観、そして忘れがちですが、戦争が無いことなどなど。こうした本当にたくさんの 要因が、重層的に互いに影響を与えながら日本人を健康に導いていったのだと思います。

医療崩壊が叫ばれ、経済もなかなか明るい兆しの見えない日本ですが、それでも、日本人の健康は他国の学生にとっては一種の謎であり、相変わらず非常に興味 深いテーマであり続けているのです。

こうしたことを念頭に、今年度は東京、沖縄、京都を巡る中で、健康な社会の諸要因を一つ一つ発見・確認できる旅にしていきたいと思います。ついでに、沖縄 の長寿村で元気なお爺ちゃんお婆ちゃんから人生の大切なルールを教わって、と。

願わくば、10年後・20年後、今回参加する学生が自国のパブリック・ヘルス界のリーダーになったとき、日本で得た知見をフルに活かして、健康な社会作り に貢献してくれますように。そして、60年後・70年後、彼らとその国民にハッピーな老後が訪れますように!

JapanTrip2009実行委員長
安東 時彦